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黄昏のシンセミア portable あっぷりけ / サイバーフロント (たそがれのしんせみあ ぽーたぶる) あとりさん [2013年10月31日]

・シナリオ:☆☆☆☆
・H度:☆☆☆☆
・GAME:☆☆☆
・音楽:☆☆☆☆
・CG:☆☆☆
・難度:☆☆☆

・総評:82点







■あらすじ
山に囲まれた風光明媚な御奈神村(みなかみむら)
天女の羽衣の伝説が残る、大きな神社を中心にしたのどかな場所だ。
大学生の皆神孝介は、夏休みを利用して母の故郷のこの村を訪れる。

きっかけは叔母から受けたアルバイトの話。
懐かしいこの村では少女達との出会いと再会が待っていた。

友人のような実の妹「皆神さくや(みながみ さくや)」
疎遠になっていた従姉妹の少女「岩永翔子(いわなが しょうこ)」
幼馴染の神社の巫女「春日いろは(かすが いろは)」
そして、村で出会った正体不明の女性「銀子(ぎんこ)」

懐かしい顔ぶれと、新たに知り合う少女との出会いを経て、孝介は少しずつ居場所を作っていく。
――しかし、孝介たちに襲い来る異変が、日常を壊していく。

山童(やまわろ)という、村に伝わる化け物の話。
生き物を変質させてしまうという神話の薬の正体。
そして、伝承に残る天女とは一体なんなのか。

数々の真実を前に、彼らは決断を迫られることになる――。


■シナリオ
あらすじを見ただけで容易に内容が想像出来るであろう、田舎を舞台にした伝奇物。
複雑……と言うか扱いが難しいジャンルの作品なことと、後述の理由(ネタバレ欄を参照)正直、期待値は低めだった。

故に、なのだろうか。凄く面白かったのは。

シナリオに関して誉めたいことは沢山ある。
村の雰囲気が良くて世界観を楽しめるとか、ヒロインとの距離感が良いとか、会話が面白いとか色々ある。
けれど一番言いたいのは、シナリオの構成。

山童に遭遇したことで色々疑念を抱き始め、調べるうちに次々明かされていく謎を追っていくのが面白い。
伏線の貼り方もナチュラルで、言われて初めてあれは伏線だったのかと気付くことが多くて驚かされたり。

テキストも丁寧で物語に入り込みやすい。
日常シーンではほのぼの笑えてヒロインに萌えられて、山童との遭遇・戦闘シーンは緊張感でドキドキハラハラする。


●共通
共通はほのぼのとした日常シーンがメインでさくや・翔子の共通と銀子・いろはの共通と二つに別れている。
長さは両方そこそこだけれど、前述の通りヒロイン達との距離感が良く会話が面白いので飽きずに楽しめる。

以下、個別の感想を攻略順に。

●美里
先生との過去が判明してすぐ終わりだった為、特に残るような感じでもないと思っていたら、
後々にこの過去が孝介にとって重要と言うか、割と大きなことだったようなので少し驚いた。
そう言う意味では、最初にやってよかったか?

●朱音
多分、一番薄味なシナリオ。
いや、悪くはないのだけど。
美里先生のように過去に関わる話な訳でも、沙智子のように良い話な訳でもなく一番短い。
……なので特に感想もない。

●沙智子
サブの三人の中では一番良いお話だと思う。
おばあちゃん想いな沙智子が凄く良かった。
ただ沙智子と恋人になるのはどうかな、と。
理由は後述。

●銀子
孝介の忘れていた過去とか銀子さんの正体とか色々とネタバレ満載かつ超展開なお話。
ファンタジーのように見えて実はSFで難しいと言うか途中から着いていけなくなった。
全シナリオを終えてから考えてみるとまた違うのだけれど、初見では理解し難かった。
でも銀子さんかわいい。

●いろは
このお話は特に難しいこともなく、私の好きな家族ネタだったので普通に楽しめた。
特にエンディング後のエピローグが明るい未来を想像出来るようで非常に良かった。
ただ銀子さんの特異性が利用されているお話なので、先に銀子さんの個別を見ておかないと分かり辛いと思う。

●翔子
……ううむ。
面白かったと言えば面白かったけれど。
仕方ないとは言え翔子が厄介すぎるし、モブの男の子1と2が凄く不快だし、エンディングはノーマルもトゥルーも報われないし微妙かも。

●さくや
後のシンセミアルートに繋がるお話で、妖怪だのとかそう言う設定は出て来ない。
実の妹であるさくやとの恋愛がメインで近親相姦となる訳だから当然反対される訳だけれど、
孝介もさくやも認めて貰おうと前向きに頑張るので無駄に重苦しくならなかったのはグッド。

●シンセミア
さくやエンドから自動的に始まるだけあって、完全にさくや編からの続きであり銀子さん編の補足でもある。
伝承に決着をつけるまとめのお話で最後にパンチが弱いという意見もあるみたいだけれど、普通に感動した。
ラストも爽やかで、希望が持てる感じで好き。

●フラグメント
進めていくうちに解放されるショートシナリオ。
基本的には本編の補足や後日談だけれど、一部、本筋に関わるもので見ないとトゥルーが見られない等がある。
個人的に好きなのはフローチャートを全て埋めると見られる締めのお話。クリア特典のある作品って本当好き。


■シナリオ(総評)
独自の設定の説明が多くて、普通に読み進めていてもストーリーの全体は掴めるけれども、
細かい整合性まで把握するのは難しいと言うか考えると「???」となってしまうと思う。
……エ? 私ノ話デハナイデスヨ?

あとグロテスクなシーンも結構あって描写が生々しいので、苦手な人にはきついかも……。
バッドエンドも結構キツイものがあるので……個人的にはプラスなのだけど人によるかと。

でも……面白かったのだけれど、個人的にはシリアスな個別より皆でほのぼのしている共通や、本筋にあまり関係のないいろは編やさくや編が好きだったり。

とは言えとてもよく練られていて綺麗に纏まった良いお話だと思う。
プレイ前の期待値を大きく上回っていたこともあり、良作認定余裕。


■キャラクター
特に良かったのはやはり、さくや。
と言うか皆神兄妹が凄く良かった。
ベッタリする訳でも冷たくする訳でもなく、適度な距離感で接している。
お互い信頼を寄せているのも信頼を寄せられているのも凄く感じられる。
と思ったらやはり両方シスコンかつブラコンで兄妹の掛け合いが面白い。
さくやは良い妹で良いヒロインで、孝介は良い兄で良い主人公だったと。

ちなみに孝介は私が今年プレイした作品の中では一番好きな主人公。
歴代でも五番以内に入るかな? 個人的にかなり好感が持てたので。

でもヒロインで一番好きなのは銀子さん。
遥かに年上なのにお茶目で、平気で下ネタを言うのに純情で恥ずかしがり屋とか色々かわいすぎるわ……


■H度
原作にあるHシーンを抜いただけで行為前後の描写の修正は大してしておらず、
原作でのHシーンのタイミングが丸分かりとかは移植作品にはよくあることで、
この『黄昏のシンセミア』もそれに該当する。

私はあまり気にしたこともなかったのだけど、今回はそうはいかない。
いや、銀子さんとかはいい。寧ろもっとやれ。
でも、翔子と沙智子は駄目。何故かと言うと、翔子と沙智子は……明らかに小学生だろっ!

流石に子供に手を出すのは駄目だろう……翔子は個別がきちんとあってそこに行き着くまでそこそこの長さがあるからまだ良いとして、
沙智子はサブヒロインで個別が短いのでそこに行き着くまで物凄く短い。
小学生と付き合って即合体は流石にどうかと……

原作は18禁のエロゲーだし、ルートを作るならHシーンがないとと言うのは分かるけれど、
普通に考えて明らかにアウトなんだからコンシューマー版ではちゃんと修正しようよ……。


■GAME
コンフィグに関しては駄目駄目。
ここまで酷いのは本当に初めて。

まず弄れるのが文章の表示速度と未読文章のスキップのオンとオフ、音楽と効果音とボイス全体・キャラクター別の音量調節のみ。
多少驚いたけれど、項目が少ないことはプロトタイプの作品で慣れていたのでここはまだ良い。
スクリーンショット機能がないのも残念ではあるけれどない作品もそこそこ多いので構わない。

許せないのは“遅さ”。
スキップがかなり遅い。
文章の表示速度の最速、一括の一つ前でも遅い。
普通にボタンを押したのに次のテキストに切り替わるのが遅い。
ボイスが流れるタイミングとテキストが表示されるタイミングが合わない。ボイスが終わってからテキストが表示されることが結構ある。
オートモードが遅すぎる上に早さの調節が出来ないので存在の意味がない。普通にボタンを押した方が早い。

そして原作版では好評らしいフローチャート。
立ち位置と進行状況が分かると言う意味では確かに便利。
ジャンプも出来るけれど、実際に開いてみるまでどの場面かは分からない。
原作版にはちゃんとどの場面か分かるよう附箋機能と言うのがあるらしい。
移植版にはそんなものはなく小さくて見辛い。
一応分岐点は分かるので、フローチャートを利用すれば遅いスキップを我慢する必要はないけれどしかし……

あと画面表示をノーマルにした時、大体の作品は左右のフレームを何種類かから選べるようになっているのに無くて寂しいとか、ワイド表示にすると立ち絵がボヤけるとか、声のついているメインキャラクターの台詞に幾つかボイスが入っていなかったりとか、兎に角不満は尽きない。


■音楽
●BGM
曲数は全35曲。特別印象に残っているような曲はないけれどよく雰囲気が出ていて良かったかと。

●ボーカル曲
・OP
「夏のファンタジア」 / 佐藤ひろ美

・挿入歌
「Long for…」 / 瀬名

・ED
「想いの果て」 / tohko

どの曲もしっとりしていて作品に合っている。
「夏のファンタジア」は名曲で特に印象深い。


■声優
平山紗弥 夏野こおり 青山ゆかり
芹園みや 柚木かなめ 青葉りんご
芹沢せいら 有栖川みや美

皆キャラクターにマッチしていて良い。
特に良いのが平山紗弥氏と芹園みや氏。
キャラクターの好みもあるけれどさくやと銀子さんは声の力も大きかった。
それとこおちゃんが出ているのが良い。
こおちゃんが出ているのがとても良い。


■CG
絵師はオダワラハコネ氏。
萌え系と言うより少女漫画っぽい絵柄。
ややのっぺりした印象を受けるような。

立ち絵は概ね綺麗だけれどCGは結構崩れているのもあり不安定。
枚数は差分抜きで90枚、内SD画が6枚。
SD画が可愛いのでもっと枚数があればな、とも思うけど。
あと立ち絵の演出が少し物足りない。棒立ちっぽく感じる。
とは言え原作は5年前だしまあ、多少はね。


■難度
選択肢式で数はそこそこだけれど、フローチャートのおかげで立ち位置が分かるので難しくない。
攻略順は銀子さんをいろはの前にしてさくやを最後にすれば分かりやすくていいかと。
サブの三人は短いので纏めてやってもメインとメインの間に挟むようにやってもいい。


■総評
雰囲気を楽しめる伝奇物、と言うとしっくり来る。
ボリュームもあって内容もしっかりしている良作。
ただPSPの移植版はシステムが駄目なのでやるなら原作のPC版をやった方がいい。

※以下、愚痴しかないので一応閲覧注意

★ネタバレ(↓に白文字で書かれています)
システムがゴミ過ぎて本当にもう……二ヶ月延期していたのにこんな出来とかっ!

……実は発売前から注目していました。と言うか初回限定版を予約していました。
二ヶ月の延期にすっかり興味を無くし、同じく発売前から注目していた同月発売作品の『恋愛0キロメートル』に乗りかえたのだけど。

正直初回限定版を買わなくてよかった。
二ヶ月待たされた後に8000円の限定版をプレイしていたらもっと酷評だっただろうな……すっかりハードルが下がっていた時に中古4000円で買ってプレイしてもこれなんだから。

どう考えても劣化移植です、本当にありがとうございました。
……ああ、作品は良いのに。

- 辞典CGI(改) v2.5 Converted byふぃる -