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恋する乙女と守護の楯 Portable AXL / Alchemist (こいするおとめとしゅごのたて ぽーたぶる) あとりさん [2014年3月26日]

・シナリオ:☆☆☆☆
・H度:☆☆☆
・GAME:☆☆☆
・音楽:☆☆☆☆
・CG:☆☆☆☆☆
・難度:☆☆☆

・総評:85点



■あらすじ
アイギスとは、すべての邪悪を払う楯だと言われている。
主人公、如月修史が所属する組織『アイギス』には、二つの顔があった。
一般家庭から一流企業まで、幅広く活躍を行う警備会社としての表の顔……
もう一つは、対象の護衛を、
時には非合法な手段を用いてでも行う、護り屋としての裏の顔。

特殊要人護衛課に所属する新人エージェント「如月修史」は、その小さな躯体からは想像もつかない驚くべきの運動神経は、これまで幾人もの要人護衛を成功させた成長株である。
そんな修史に下った、新たな護衛任務は……なんと『女装して全寮制女子校に潜入し、女学生として生活しながら、対象を護衛せよ』
――という、無茶すぎる内容だった。

「ムリですって! つーかムリだ! 俺、男ですってば!」

慌てふためく修史の肩を、彼の上司は優しく叩く。

「大丈夫、お前ならきっとやれる。
 だってこんなにカワイイし。よしよし」

そう。修史は小さな体躯だけでなく、中性的な顔立ちに、トーンの高い声の持ち主。
一見するとボーイッシュな女の子にも見えなくはない。
嫌がる修史を無理やり、現場へと投入するアイギス。
そして修史は出会う。護衛対象の女の子たちに……

決して、自分の正体がバレてはいけない。
決して、自分が男だと悟られてはいけない。
そして、護衛対象を護り抜かなければならない。

女学生『山田妙子』として潜入した修史を待ち受けていたのは、禁断の花園。
全てが女子で覆い尽くされた、綺羅の空間。
既に学園へと潜入している同業者と、敵のエージェントが入り乱れ、
学園には、スリリングな毎日が溢れかえっていた。

時には文化祭、時には調理実習と女学生らしい生活を送りつつ……
毎日の女装に気合いを入れ、修史は日々、護衛対象となる女の子たちを見守り続ける。

果たして修史は、彼女たちを護りきることができるのか……?
如月修史と女の子たちとの、奇妙な学園生活が始まろうとしていた。


■シナリオ
この作品も『Steins;Gate』からの『Chaos;Head NoAH』と同様、『Princess Frontier』の後にプレイしようと思っていたことを忘れていて、一年以上経った今、ようやく思い出してプレイ。

予想していた通りの出来と言うべきか。
『プリフロ』レベルの面白さを期待していたので、割とハードルは高めだったのだけれど、その期待値を下回ることはなく、
かと言って上回ることもなかった作品。

全然、悪い意味ではなく、最初から最後まで変わらないノリとモチベーションでプレイ出来るので、安心感があると言っていい。


お話はあらすじの通り、新米エージェントの修ちゃんが女装して山田妙子として女子校に潜入し、正体がバレないかヒヤヒヤしつつ、女子だらけの花園にドギマギしつつ、護衛対象を守っていくと言う感じ。

まず、女装ネタはメインだし、大体の人が合格点が出しそうなレベルに描写はしっかりしていると思う。
修ちゃんが女装に戸惑いつつ、慣れていく姿は面白く、割と言動ががさつで度々素が出ていたりと男らしさも無くならないまま、ハプニングが起きるのでちゃんとラブコメだし。

次に、エージェントという設定とか戦闘についてだけれど、此方は大分あっさりめ。
カットインで臨場感を出したり視覚的には良いのだけれど、戦闘中もぺらぺら喋っているので緊張感は無く、此方に期待していたらガッカリかもしれない。


●共通

前述した通り、新米エージェントの修ちゃんが女装して山田妙子として女子校に潜入し、次々と起きるハプニングに戸惑いながら対処しながら、護衛対象を守る感じ。

修ちゃんが女装に戸惑いつつ慣れていく姿も面白いし、次々と事件が起きるので退屈しないし、会話のテンポが良くて、楽しい。

特に良いのがヒロインたちとの距離感。
多分人って異性と接する時は少なからず飾っていて、同姓の友人といる時が自然体だと思う。勿論、人によるとは思うけれど。
皆、修ちゃんを「山田妙子」という女子生徒と思って接して来る訳だけれど、同姓相手と思っているから態度に嘘臭さがなく、
女の子同士だからと言って極端にベッタリする訳ではなく、編入生ということもあって最初は認められておらず適度に遠くて。

つまり、主人公を気に入る、気になる過程が自然で、自然体なキャラクター達にも好感を持ちやすい。
女装ものなら『オレは少女漫画家』とかプレイしたことがあるけれど、彼方は女装がメインではなく、
本当の主人公を皆知っているのでまた違うからなあ。

●蓮
遊び半分で命の危険がある仕事に首を突っ込みまくると言う、蓮の行動は結構、賛否が分かれそうな気がする。
私も少しどうかと思うけれど……でも蓮自身は結構好きだし、ラストがかなり良かったので、割と好きなお話。

●鞠奈
う〜ん、このお話は少し微妙だった。
鞠奈がそんなに好きじゃないと言うこともあるけれど、戦闘シーンが微妙。
蓮編と鞠奈編では戦う相手が一緒なのだけれど、蓮編の方が相手が潔いし、駆け引きが良いのだけれど、鞠奈編では微妙。
でもラストは良かった……かと思う。

●若菜
悪くなかったと思う。
問題を全部すっ飛ばしてエンディングを迎えたのは驚いたけれど、イチャラブも悪くはないし。
主人公からの告白を、ヒロインが一度断ると言うのは割とあるけれど逆はあまりない気がする。

●りお
このお話は良かった。
シスターリディアとの戦いが面白かったし、りおももっとツンツンしているかと思っていたら、恋人同士になった後、素直に好意を示してくれて予想外にかわいかった。
エンディングも突然時間が飛ぶのではなく、普通に数日後くらいだし(別に時間が飛ぶのが悪い訳ではないけれど)。

●雪乃
某キャラクターの本性が露わになることや、一応メインルートっぽい作りになっており、面白い。
けれども……、終盤の雪乃の行動は少しね。気持ちは分かるのだけれど、どうして一人で飛び出していくかなあ、と。

●有里
このお話は微妙……。
最初から妙子の正体を知っている有里だから、女装バレはないし、他の子とは違う感じで見せてくれるのだろうと期待していたのだけれど、
なんかショボかった。
恋愛描写も、有里の行動がちぐはぐで「何なの?」という感じで、
戦闘シーンも敵が小物すぎて鬱陶しくてつまらなかった……。ただラストの設子さんだけは○。

●設子
一番面白かったお話。
罠を仕掛けてくる設子さんも面白いし、シスターティナとの戦闘シーンも良かった。
教会で設子さんとお話をするシーンは、イラストもドラマチックで印象に残るしね。
くっつくのが唐突な気はするけれども、テンパる設子さんが滅茶滅茶かわいいので、深く考えはしない。エンディングも爽やかだしね。


■シナリオ(総評)
多少の差はあれど面白かったことに違いはない。
特に設子さんとりおのお話はなかなか良かった。

欲を言うと、予想の上を行く展開が一度だけでも見たかったかな。
先の展開がすぐに読めて、その予想が外れることがないから少し、物足りなさを感じる……けれど、逆に言うと終始安心していられると言うか、プレイヤーを不安にさせることがないしっかりとした安定感がある作品。

まあ、バッドエンドでは全ヒロイン死ぬけれど。
あの取って付けたバッドエンドは要るのか……?


■キャラクター
攻略ヒロインの中では設子さんがダントツで、他は皆大体同じくらい。
皆丁寧に掘り下げられていて差が付きにくいのは『プリフロ』と一緒。
追加ヒロインたちの絡ませ方もナチュラルで扱いが丁寧なことも一緒。好感が持てる。

女子校なので仕方ないけれど、『プリフロ』みたいに面白い男共が少ないのは残念かなあ。

主人公は修ちゃんも妙子もどちらも好きだ。
優しくてかわいくて格好いい、そして強い。


■H度
皆無と言う訳ではないけれど、殆どないね。
丁寧に修正されているようで、シーンの前後っぽい特有の雰囲気もなく、全然そういう気配を感じない。


■GAME
コンフィグは『プリフロ』と殆ど同じなので、特に不満はなし。
相変わらずシーンスキップ機能が有能で二周目以降に大助かり。
この前にプレイしたのがスキップが死ぬ程面倒臭かった『Chaos;Head』だったので特にそう思う。

スタート画面の仕様やクリア後のおまけも同様。
線画・初期キャラクターデザイン案等は見られる機会は滅多にないので楽しいし、枚数も全86数とべらぼうに多い。


■音楽
●BGM
曲数は全24曲。
まあ、普通かな? 物凄く好きな曲とかはなし。
「飾らない笑顔」「本当の日常」とか割と好き。

●ボーカル曲
・OP1
「shiled nine energy flow ver.」 / Rita

・OP2
「LOVE SHILED」 / 奥井雅美

・雪乃編ED
「eternal smile」 / 真理絵

・蓮編ED
「二人の見る世界」 / 茶太

・鞠奈編ED
「feeling, shining」 / 片霧烈火

・設子編ED
「wind of change」 / iyuna

・有里編ED
「rainbow place」 / Rita

・若菜編ED
「優しい涙」 / 霜月はるか

・りお編ED
「colorful massage」 / YURIA

「LOVE SHILED」が滅茶苦茶いい。
映像も格好いいし、これだけで買った価値があると言える。
エンディングも良いけれど特に耳に残る曲はなかったかな。
ヒロインの心情や個別の内容をなぞった歌詞は素敵だけれども。


■声優
釘宮理恵 友永朱音 櫻井浩美 田口宏子
力丸乃りこ 吉田愛理 田村ゆかり
矢作紗友里 永田佳代 加藤雅美
田中涼子 先割れスプーン 八尾一樹

……先割れスプーンが滅茶苦茶目立つね。
と言うかどう聞いても鳥海○輔さんです。

それは置いといて、この『恋楯』は全体的に、声優とキャラクターがバシッとハマっている。
友永さんは別名義も含めて今まで結構当たって来たけれど、この役が一番合っていると思う。

でもやはり今回のMVPはくぎみー。
修ちゃんの時と妙子の時で少し声の高さが変わっていたりナイス。
あとは田口宏子さんが出ているからね、それで満足しちゃうよね。


■CG
絵師はせのぴーこと瀬ノ本久史氏。
『プリフロ』より古いので当然だけれど、絵の癖はより強い感じ。
『プリフロ』の時は思わなかったけれど、この時の絵だと昆虫絵って言われていたのも少し分かるかも。
私は好きですよ、せのぴー絵。

CGは全221枚、内SD画が63枚。
兎に角多い! 単独原画でこれだけの枚数とかせのぴー以外知らない。
質も高く、特に戦闘シーンのイラストはどれも動きがあって良い感じ。
差分をカットインで現すのは臨場感があって良いね。他の絵師さんもどんどんやってほしい。

で、SD画。
もう本っ当に愛らしい……。
SD画はせのぴーのが一番好き。こもわた氏も捨てがたいけれど一番。
単にかわいいだけでなく遊び心を感じるのが良い。本当に凄い好き。

立ち絵も崩れがなく、差分も多いし、良い感じ。
ドアップ立ち絵は迫力あって良いなあ。楽しい。
服装差分が特に多い気がする。設子さんの胴着姿とかシャツ一枚の姿とかワンシーンしか使われないのにちゃんとあるし。


■難度
選択肢がかなり多いので、それなりの難度かと。
あと若菜とりおはバッドエンドの分岐が他の五人より分かりにくい。

攻略縛りはないので好きな子からしていいと思うけれど、【鞠奈→蓮→若菜orりお→雪乃→有里→設子】の順をオススメ。


■総評
抜群の安定感を誇る良作。
この前にプレイしたのが電波シナリオでグロ成分多めの『カオヘ』だったので、凄い癒された。

★ネタバレ(↓に白文字で書かれています)
AXLの作品、もっと移植してほしいなあ……またどこか移植してくれないかな?
その時はスクショ搭載で頼むっ……!

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