・シナリオ:☆☆☆・H度:☆☆☆・GAME:☆☆☆☆☆・音楽:☆☆☆・CG:☆☆☆☆・難度:☆☆☆☆☆・総評:64点■あらすじ西條拓巳は、引きこもり一歩手前の高校2年生。「三次元に興味はないよ」と言い切り、部屋で大量の美少女フィギュアに囲まれて生活している。彼が住む渋谷では、『ニュージェネレーションの狂気(通称ニュージェネ)』と呼ばれる連続猟奇殺人事件が起きていた。その犯人はいまだ捕まっておらず、ネットやテレビを騒がせている。ある日チャットをしていると、『将軍』と呼ばれる謎の存在から、次のニュージェネ事件を予言するようなグロ画像が送られてきた。翌日、拓巳は学校帰りに、まさに予言された通りの殺され方をした、凄惨な事件現場に遭遇する。そしてその遺体の前には、血まみれの少女――咲畑梨深が立ち尽くしていた。巧みの平穏な日々に猟奇事件の影が忍び寄っていた――。■シナリオ妄想科学アドベンチャーシリーズの一作目にも関わらず、今ではスッカリ『Steins;Gate』の影に隠れてしまった本作。私も『シュタゲ』の後にプレイしようと思っていたのを、忘れていて一年半程経った今、ようやく思い出してプレイ。……うん。……うん。システムが悪い。お話そのものは悪くはない。一周目だけなら、『シュタゲ』以上のワクワクだった。けれど……システムが悪い。それを今から説明していく。 その前に『妄想トリガー』について。本作では分岐点で拓巳がどういう妄想をするかによってルートが決まる。ポジティブ妄想とネガティブ妄想と、妄想しないの三つの選択肢がある。勿論選択によって内容は異なるのでテキスト量がとても多くなっている。それと『Yes/No分岐』。質問にイエスかノーで答えるというシンプルなもの。こちらは答えによってテキストが違うことは少ない。●一周目:『Silent sky』一周目はエンディング固定、妄想トリガーはポジティブのみを選択する。一周目はとても面白かった。アニメを途中まで見ていたので、序盤の内容は知っており、あまり面白くないと記憶していたのだけれど、アニメと違って序盤から楽しめ、第一章の終盤でもうお話に引き込まれていたし、丁寧ながらも自然で読みやすいテキストとまるでアニメを見ているように感じる巧みな演出に魅せられて、エンディング到達までずっとワクワクしながら進められた。エンディング後も「謎はもう殆ど解けたけれど、トゥルーエンドはどうなるのだろう?」と期待していた。●二周目:『crying sky』ここで一周目のセーブデータが二周目以降に使えないことを知る。面倒臭いけれど後のことを考えて分岐点でのセーブデータを作る。内容は一周目と殆ど一緒。スキップが長かったとは言え分岐も一周目と殆ど一緒で割と楽だったし、二周目なのでまだモチベーションは高い。●三周目:個別ルート開始妄想トリガーは妄想しないのみを選択。一・二周目は殆どポジティブ妄想しかしていないので、妄想しないを選ぶとトリガーの部分はスキップ出来ない。妄想トリガーの選択差分のテキストは少しの量ではあるものの数が多く、スキップして読んでの繰り返しがとても面倒臭い。第一章から第十章までで、個別は第七・八章から。分岐点はヒロインによって違うけれど大体第二・三章からで、一章一章がそれなりに長く、ヒロインごとの選択しつつ既読部分を飛ばすスキップ作業をヒロインごとに繰り返すなんて死ぬ程怠いのでは? と気付き、不安になる。→セナ編『デウス・エクス・マキナ』中盤、セナに萌える。終盤、セナに苛立つ。結果、微妙。あまり必要性を感じないお話だった。●四周目:優愛編『月と太陽』一周目の時点から優愛は好きじゃなかったけれど、もっと嫌いになるお話だった。優愛は自分勝手すぎるし、ラストも拓巳は許す必要があったのかと思ってしまう。結果、モチベーションがやや下がる。妄想トリガーは二周目と同様に妄想しないを選択する必要があったので比較的スキップ作業は楽だったけれど。●五周目:七海編『day dream』ルートに入るにはネガティブ妄想をする必要があるのでまた面倒臭くも、七海は好きなので頑張る。七海がかわいらしくお話も良かった。こういうダークな雰囲気は割と好き。結果、モチベーションがやや上がる。●六周目:あやせ編『罪過に契約の血を』妄想トリガーのテキスト差分は大体回収出来たので、妄想トリガー部分もスキップ出来るようになり、スキップ作業中スマートフォンを弄って時間を潰す。内容は思いの外普通だった。あやせは割とかわいいと思った。モチベーションは特に変動せず。●七周目:梢編『殺戮にいたる病』あやせ編と同様、スキップ作業中はスマートフォンを弄って時間を潰す。お話は……駄目。つまらなかった。と言うか嫌いだった。殺人、殺人、凌辱、殺人、殺人……。殺しまくり、死にまくり。メインキャラクターの殆どが死ぬ。それだけならまだしもDQNが七海を凌辱したあげく殺すのは流石に胸糞が悪かった。まあ軽いテキストだけの描写だけだけれどそれでも気分悪い。最後にこずぴぃと拓巳も死んで終わり。なんじゃそりゃ……。結果、モチベーションがかなり下がる。●八周目:梨深編『アニマの像』スタートから始めなくてはならない上、分岐点以外にもちょいちょい違う部分があったので、スキップを押して後は個別までスマートフォン……と言う訳にもいかず、凄く面倒臭かった。ただ内容は面白かった。黒幕は死ぬし、締めも明るいし。やっとトゥルー! モチベーションが上がる。●九周目:トゥルールート『blue sky』解放攻略サイトを見ながら進めていたのだけれど、攻略サイトには「全エンディング後にスタート画面に『blue sky』と表示される」と書いてあったのに……出ない。あれ? と思い他の攻略サイトを見ても書いてあるのに出ない。もしかしてバグ? 不良品? と焦って詳しく検索してみると、Xbox360版にはあるもののPSP版にはないとのことで。スタートから始めないと入れないらしく、最初から分岐点の第十章まで一時間半かけてスキップ……。そして分岐点に到達し、選択肢を選んで、ルート確定!さあ、これからどんな展開が待っているの? とワクワクしつつも、ラストなのでじっくりプレイしようと思い翌日に持ち越し。そして翌日にプレイ開始すると……一周目とほんの少し違うだけの内容。未読部分の声を全部聞いて、三十分。……はあ?なんじゃそりゃ?何それ? この三十分をトゥルーエンド扱い?確かに爽やかな終わりだけれど。エンディング後、各章の冒頭から入れるショートカット機能が解放される。……えっ?あるなら、どうして一周目が終わった時に出してくれないの?そしたら周回ごとのスキップ量が大幅に減ったじゃない……。は……はあ〜〜〜〜〜?■シナリオ(総評)本当に、システムが悪い。妄想トリガーは仕方ない。この作品には必要だ、面倒臭いけれども我慢出来る。けれど一周目のセーブデータを使えないことと、ショートカット機能を出すタイミングは許せない。システムのせいでシナリオまで損をしている気がしてならない。トゥルーとか、一時間半スキップさせといてこれかよ、としか。■キャラクター癖のあるキャラクターが多い。まず主人公の拓巳の癖が強い。典型的なキモヲタでリアルに「フヒヒ」とか言っちゃう。別に嫌いでもないけれど後半のうじうじ具合は流石に鬱陶しい。あと守ってくれるなら誰でもいいのかコイツ、と思ったけれど。けれど覚醒シーンは良かった。ヒロインはまあ……普通……。素直に好きと言えるのは梨深と七海くらいか。セナ・あやせは若干鬱陶しいところもあったけれど許容範囲内。優愛・こずぴぃは無理だった。サブキャラクターは将軍くらいしか印象ない。■H度ポジティブ妄は殆どがエロ絡みのシーンと言うことで割と高め。ディープキス・足コキ・レイプ未遂等シチュエーションも様々。勿論CERO Dの範疇での描写だけれど。■GAME特殊なのは妄想トリガーとイエスノー分岐。演出も凝っていてただの紙芝居になっていないのはいいけれど、面倒臭いね。コンフィグは『シュタゲ』と一緒なので大きな不満もないかな。強いて言うならスキップが最速でもそんなに速くないくらいか。■音楽●BGM全29曲で質はまあまあ。特に気に入った曲とかはないけれど、効果音と作用して本編で良い仕事をしていると思うので○。●ボーカル曲・OP「Fetishism Ark」 / いとうかなこ・ED「イノセンス」 / ファンタズム(FES:榊原ゆい)・ED2「A WILL」 / いとうかなこ・梨深編ED「Trust in me」 / 咲畑梨深(CV:喜多村英梨)・七海編ED「Love Power」 / 西条七海(CV:宮崎羽衣)・あやせ編ED「心の闇を切り裂いて」 / ファンタズム(FES:榊原ゆい)・セナ編ED「Calling」 / 蒼井セナ(CV:生天目仁美)・梢編ED「ちいさな声に気づいて」 / 折原梢(CV:辻あゆみ)・優愛編ED「WHITE LILY」 / 楠優愛(CV:たかはし智秋)・挿入歌「密教の首飾り」 / ファンタズム(FES:榊原ゆい)曲の質は高い。個人的には「Love Power」と「Trust in me」が好き。しかしゆいにゃんやキタエリは当然として、皆結構歌がお上手で。また、他にも、「fake me」 / いとうかなこ「アレルイヤの福音」 / ファンタズム(FES:榊原ゆい)「Find the blue」 / いとうかなこ「Desire Blue sky」 / いとうかなこ「クライ」 / いとうかなこ「グラジオール」 / ファンタズム(FES:榊原ゆい)「罪過に契約の血を」 / ファンタズム(FES:榊原ゆい)が収録されている。「Find the blue」とかは挿入歌だったと思うけれど、しっかり覚えていないので断言出来ず。■声優吉野裕行 喜多村英梨 生天目仁美たかはし智秋 辻あゆみ 榊原ゆい宮崎羽衣 友永朱音 小野大輔一条和矢 保村真 くじら石田彰 青木典子 代永翼豪華声優陣。今回のMVPは間違いなく吉野裕行氏だろう。ピカイチの演技だった。ハマり役だと思う。■CGメインキャラクターデザインがささきむつみ氏・原画が松尾ゆきひろ氏。プレイ前は微妙だと思ったけれどかわいいし描き分けも上手だし良いね。立ち絵は差分は普通だけれど目パチ+口パクの演出のおかげで臨場感がある。CGは全207枚と枚数もかなり多いし、構図もよく崩れも特にないし良い感じ。兎に角演出が凄い。目パチ+口パクもそうだけれど背景の種類もめちゃめちゃ多いし、ムービーも結構入るしね。この作品で一番凄いところと言える。演出はとても良いと思った。■難度妄想トリガーは難しい。一周目は固定だけれど、二周目以降は攻略サイトを見て進めた方がいい。攻略縛りは一周目が固定でトゥルーエンドはトゥルー以外の全エンドを見たら解放。トゥルーにロックがかかっている仕様は割と好きなのだけれど、この作品では微妙。■総評作業感のせいでシナリオの評価まで下がってしまう、システムで損をしている作品。Xbox360等据え置き機版ならマシかもしれないので、買うのならそちらをオススメ。まあ作品自体好き嫌いが別れると思うけれど……グロとかスプラッタ・電波系なシナリオが好きな人は是非。★ネタバレ(↓に白文字で書かれています)そう言えば『カオヘ』から『シュタゲ』に色々受け継がれているところがあるのだけど、オカリンのドクペ好きも拓巳のコーラ好きから来ているのかな?