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グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA- Frontwing / PROTOTYPE (ぐりざいあのかじつ る ふりゅい で ら ぐりざいあ) あとりさん [2013年4月22日]

・シナリオ:☆☆☆☆☆
・H度:☆☆☆☆
・GAME:☆☆
・音楽:☆☆☆☆☆
・CG:☆☆☆☆☆
・難度:☆☆

・総評:94点



■あらすじ
――その少女は、生まれてきたことが既に間違いだった
逆らった罪――
――生きながらの死
誰も守ってなんかくれない――
――そして生き残った罰。

生きる目的を失った少年は隔離された学園で5人の少女と出会う。
彼女達は、後悔の樹に実った懺悔の果実。

――その学園は、少女達の果樹園だった。


■シナリオ
この作品は、決して凡作ではない、良作でもない。
“傑作”の名が相応しい作品……凄く面白かった。

理由はと言うとシナリオが面白い。これが全て。

暴力的な流血描写とかコンシューマーゲームなのに性的なネタを濁そうともしない所とか、
全体的に見て凄く好き嫌いの別れそうな作品ではあるのだけど、最近媒体を問わずこう言う過激な作品に触れていなかった私には凄く良かった。

ただ、決して文句の付け所無し! と言う訳ではなく……


●共通
共通はひたすらギャグで、影を落とす展開はない。
ヒロイン5人をきっちり掘り下げていて笑えるし、小ネタをポンポンと見せられている風で退屈は感じない。
フロントウィングの過去作のキャラやネタがちょびっと出て来たりする遊び心は好きだし、上手に出来てる。

けど、長い。
プレイ時間が出ないので正確な時間は分からないけれど、軽く7・8時間はあったと思う……長い。

以下、個別の感想を攻略順に。

●みちる
“生きながらの死”
私の好きな桑島由一氏が書いているとのことで、初めにプレイしたのだけれど初っ端から、重さに驚いた。
重いけれど泣きの要素も含んでいて、全員にちゃんと救いがあり、締めも爽やかで凄く良いお話。

共通の嘘ツンデレぶりからはとても想像が出来ない設定があり、みちるを見る目がガラリと変わったことと
桑島の「シリアスは駄目」と言う印象を覆すことになった良いルート。

●薪菜
“誰も守ってなんかくれない”
系統としてはお嬢様系ヒロインの話に多くある逃避行の話なのだけど、御家騒動に関してとてもヘビーで話の規模が大きい。

テキストや持って行き方は良く、面白いことは面白いのだけど、個人的にあまり来るものはなかったかも……と言うか長い。
締めも微妙に後味が悪いと言うかスッキリしないのが難。

それとは別に、お兄ちゃんからパパへの呼び方チェンジは意外だった。
まあ個人的に、妹でないのにお兄ちゃん呼びするのはあまり好きではないので、良かったかな?

●幸
“逆らった罪”
他のルートはどれもヘビーな雰囲気を漂わせているけれど、幸編は違う。
暖かみのある家族の話で普通の恋愛物。
異常性を感じる場面はやはり多々あるのだけど鬱になる要素は殆ど無い。
個別の中では比較的明るめなので、重い薪菜編の後だと良い気分転換に。

こう言う家族の話には滅法弱いので幾度となく涙腺を刺激されたことと
ED曲への入り方がとても秀逸だったことがあり、お気に入りのルート。

●由美子
“生まれてきたことが既に間違いだった”
正直由美子編だけ沈んでいる感じがする。

家の問題で逃避行したりと薪菜編と少し被っていて、比較してしまう結果下位互換な感じが否めないし
幸編で家族の暖かみに触れた後にプレイしので由美子の過去や親族の屑さには胸糞悪かったので微妙。
後半、ご都合主義が目立つのも残念。

他ヒロインの話はもれなく出来が良いので、「デレた由美子が可愛かったからいいか」とも思えず……

●天音
“生き残った罰”
この話は、別格。
プレイした人の殆どがお気に入りのルートとして挙げる話だと思う。

ホラーな天音の過去編もそうだけれど、過去編が終わり一連の事件を片付けた後、明るい締め括りが出来そうな所を
あそこまで書ききるか〜と言う感動と共に言葉にし難い気分に……

ただ、天音編において重要な人物である一姫に関する線が放置……と言うか回収する気さえないところが引っ掛かる。


■シナリオ(総評)
共通・個別共にボリュームがあり、中身も濃い。
残念なのは由美子編と、一姫のことと主人公の過去や謎に関する伏線放置か……

ただ全員の話が高い水準で纏まっていることには違いない。
やっぱりシナリオゲーは良いな、と、思わせてくれた作品。


■キャラクター
真っ先に考えるのは主人公のことか……特殊な環境にいたせいか常識からズレていたり斜に構えていたりと、好き嫌いがきっぱり別れそう。
軍人気質で一見恋愛には興味無さそうなのに、個別でヒロインに絆される様とか、割と面白く見れたので私は好きだけども

ヒロインも色々と問題を抱えていて、それぞれ影はあるが
キャラや仲間内での立ち位置は確りしているし、個性的。
ただ、私が一番好きなのは一姫なんだよね……


■H度
コンシューマーゲームにしては結構高め。
普通はPC版にあるHシーンを別のイベントに差し替えたりするのだけど、差し替えるどころか濁そうともしない。
申し訳程度の泡を乗せた裸の立ち絵とか、下着姿のCGとか。
下ネタも直接的な単語が普通に出て来て驚いた……一応、CERO Dの範囲で許されるレベルなのだろうけども

エロが浮いている訳ではないのでいいけれど、PC版から修正するのが面倒臭かった感バリバリ。


■GAME
ゲーム性は普通のノベル式で普通。選択肢も少ないので簡単。

コンフィグに関してはリトバスの時と比較して凄く充実している。
QSとQLに前後の選択肢にジャンプ、次の音声まで音声再生を継続するシステム等が追加されて凄く快適。
シーン回想は今まで見たシーンをいつでもどこからでも好きに見ることが出来たり、進行状況が分かると言う意味でも便利でシステム面は満点。

プロトタイプは今後これをデフォルトで頼む……!


■音楽

●BGM
曲数は普通のものが30曲+OPと挿入歌(?)のメロディーバージョンが2曲の合計32曲。
特に印象に残った曲はないけれどどれも、耳障りがよく作品に合っている。

●ボーカル曲
・OP
「終末のフラクタル」 / 飛蘭

・由美子編ED
「ホログラフ」 / eufonius

・天音編ED
「HOME」 / 橋本みゆき

・みちる編ED
「SKIP」 / 茶太

・蒔菜編ED
「迷いの森」 / 佐藤ひろ美

・幸編ED
「この日のままで」 / NANA

・挿入歌(?)
「マグロ・Beautiful」 / ¥Cuスタ平

OPは安心の飛蘭で高クオリティー。
EDはヒロインにそれぞれ曲がある。
ボーカル曲が多いと個々の印象が薄くなりがちなのだけど皆、歌詞がヒロインとその物語を準えたものでどれも印象的。

特に好きなのが幸編EDの「この日のままで」。
正に幸の為にあるような曲で、作中での使われ方も素敵だったのでお気に入り。
みちる編EDの「SKIP」も爽やかで良い。
どの曲(OP以外)もフルで収録されているのが嬉しい。


■声優
田中涼子 田口宏子 水橋かおり
たみやすともえ 清水愛
友永朱音 やなせなつみ 鳴海エリカ

有名所起用の安定感。
大好きな田口宏子が出てる……けれど今回のMVPはたみーか。
一歩間違えたら完全にウザキャラな蒔菜がこんなにも可愛いのは、声優さんの力が大きい。

清水愛も好きだけれど、ギャグシーンでは乃来亜を思い出していかんw


■CG
絵師はメインはフミオ氏と渡辺明夫氏でSD画はななかまい氏。
絵柄は全然違うけれど皆、綺麗で好みの絵なので不満は無し。

立ち絵とSDは差分がとても多く、演出が細かいので見てて楽しい。
立ち絵は特に、個別にしか登場しないサブキャラにもきちんと用意されているのが素晴らしい。
天音編では特にそれが嬉しい。

CGは出し方が上手く綺麗だけれど明夫氏の方は途中で描き方を変えたのか、既存のCGと追加のCGで少し絵柄が違う……何と言うか、幼くなってる?
まあ、気にする程のレベルではないけれど。

枚数は差分抜きで128枚、内SD画が33枚。
どの絵も崩れがなく質・量共に申し分無し。
PC版は未プレイだけれど追加CGも結構多いようで嬉しい。


■難度
選択肢は少なくて分かりやすいし、前後の選択肢にジャンプも出来るので、簡単。
攻略縛りもないけれど私は【由美子→幸→蒔菜→みちる→天音】の攻略順を推奨。


■総評
純粋に面白かった。過激な表現や展開に抵抗のない方は是非、やってみてほしい作品。

★ネタバレ(↓に白文字で書かれています)
アニメ化決定おめでとう!

で、結局、一姫は生きてるの? 死んでるの?

三部作と言うことは知っていたけれど、やっぱり伏線放置は嫌だよね。気になる
続編の迷宮と楽園も移植しなさいよね……ちゃんと新品、予約してあげるからさ

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