・シナリオ:☆☆☆☆☆・H度:☆☆☆☆・GAME:☆☆☆・音楽:☆☆☆☆・CG:☆☆☆☆☆・難度:☆・総評:98点■あらすじ俺の名前は、神尾賢二。私立斗際学園に通う、ごく普通の男子生徒……とはちょっと違う。実は俺、漫画家です。しかも、少女漫画家。…みんなにはナイショだけどね。『伊集院アリス』って言えば、ちょっと前は天才漫画家って呼ばれるほど有名だったんだぜ?え、今? 今はどうかって?今は、その……。『伊集院アリス先生の次回作にご期待ください』…世間じゃ「打ち切り漫画家」って言った方が有名だろうな。週刊少女漫画雑誌『コミックチャーム』での連載もついに終わってしまった。でも、このまま消えていくつもりなんてさらさら無い。学生と漫画家を両立させながら、すごい作品を世に送り出してやるんだ!そんなある日、俺の担当編集者にして姉でもある「神尾千佳」が、俺を売り込む『すっごいアイデア』を思いついたって言うんだ。それは一体何かと聞いてみたら…。「今日からアンタは、『天才美少女漫画家・伊集院アリス』になるのよ!」突然そんな事を宣言され、女装してマイクで声まで変えて「美少女漫画家」にされた俺。いくら俺を売り込むためとは言え、こんな事までするなんて…マジですか?…とにかく、俺は「打ち切り漫画家」なんて不名誉な肩書きのままは終わらない。俺の夢は、少年も少女もない、全ての人が境界線を持たずに読める漫画。「目指すは、全人漫画家だぜっ!!」“美少女漫画家”、伊集院アリスの戦いはこれからだ!■シナリオ私は思う。ギャグの面白いギャルゲーは貴重であると。恋愛対象である攻略ヒロインに汚れ役をさせると人気が出にくい、汚れ役のサブの出番を多くすると苦情が来る、メインが埋もれる、シナリオライターの才能、エトセトラ……と、色々と事情があり、ギャグの面白いギャルゲーと言うのは少ない。そしてギャグが面白い作品は途中から失速するパターンが非常に多い。個別に入るとシリアスな展開になるけれどそのシリアスがつまらない、とか言うのはお決まりで、媒体を問わず多い。故に貴重なのだ。こういうギャグが終始面白い作品は凄く、凄く。美少女漫画家として顔出しをしたことで起きるドタバタ騒動の中、ひっきりなしのギャグ、軽快なテンポ、コミカルなテキストに終始にやにやして、随所にあるキャラクターの行動の突飛さに腹を抱えて笑って。個別に入るとシリアスな展開もあるのだけれど、シリアスはシリアスでしっかりしていて面白いし、テンポの良さも無くならないのでずっとサクサク進められる。●共通美少女漫画家として売り出したことで起きる騒動によるドタバタコメディ。ネットスラングやパロディの連発に最初は戸惑ったけれどもテンポが良く、皆生き生きしていて滅茶苦茶楽しい。長さはボイスを全部聞いて4時間程。●ハルカ一緒に暮らすことになったりとか共同で漫画を描くことになったりとか色々あった気がするのだけれど、終盤の逃走劇……と言うか全員がハルカちゃんのコスプレをしているCGのインパクトが強すぎてそれ以外全部吹っ飛んだ。あの下りの千佳ねえの扱いw●ヒスイ全部を終えてみて思うのは、共通でも他ヒロインの個別でも勿論自分の個別でもずっと幼馴染みとしてアシスタントとして支えてくれるヒスイだけれど、ヒスイの本当の夢が叶えられるのはこのお話だけと言うこと。プレイしていた時も勿論面白かったけれど、オールクリアした後にまた良さが分かる……そんなお話だと。●楓……正直感動した、このお話には。他のお話だと女装&漫画家バレは拍子抜けな程軽く流されるけれどこのお話では、一番活かされている上に漫画と漫画家を嫌う楓に主人公が漫画家らしい方法で、漫画を読ませて楓を変えるのが凄く良かった。楓が漫画を読むシーンや家族の再会シーンは普通に泣いた。エピローグも一番びっくり……かつ幸せで読後感が爽やか。●千佳千佳ねえと副編集長との確執とか主人公の家族のこととか、色々明かされるお話。唯一このお話でだけ恋人関係にならない……のだけれど何故かキスシーンはある。家族のお話だったのだし、別に要らなかったのでは?お話自体は面白かったけれどそこだけ疑問と言うか。●凛菜このお話が一番熱く、漫画家をしている。こう言う“皆で力を合わせて一つのことを成し遂げる”みたいなお話は大好きなので滅茶苦茶良かった。凛菜に萌えて、凛菜と燃えて。最高じゃないか! いやもう本当凛菜が好きすぎる。……とまあそれは置いといて、他のお話だと正体はうっかりハプニングでバレてしまうのに、このお話でだけ自分で明かすのも良かったし、ネットカフェでデートと言うのも珍しくて良かった。■シナリオ(総評)最初から最後までずっと滅茶苦茶面白かった! つまらないお話が本当に一つもなかった。個別に入ってもヒロインと二人の世界にならず登場人物全員がバッチリ活躍するのがいい。個別によって主人公の描く漫画の内容が変わったりするのも面白いし、本当凄く良かった。■キャラクター驚いたのは、シナリオライターの箒星氏とイラストレーターのあかざ氏が関わっている過去作のキャラクターが沢山出て来ること。同じ雑誌に連載を持つ作家として名前だけ出て来る人もいれば、その作品の役職のまま、台詞付きでがっつり顔出しする人もいる。過去作を知らなくても面白いのでいいけれど、その作品もやってみたくなってしまうから困る。『パトベセル』面白そうね……。勿論この作品のキャラクターも魅力的。皆凄く生き生きしていて気持ちいいし。でも今回は凛菜! 凛菜が好きすぎる。誰か一人が断トツで好きなのは珍しい。皆かわいいし好きなのだけれど今回は、凛菜だけが頭三つ分くらい飛び抜けている。初登場の時から「この子良いな」とは思っていたけれどまさかここまでになるとは。一番人気は多分ヒスイなのだろうけれど私は兎に角凛菜が滅茶苦茶好きです、はい。主人公もアホですぐ調子に乗るけれど決めるところはビシッと決めてくれるし良い。■H度コンシューマーオリジナルの割に……いや、だからこそなのかもしれないけれど、結構高め。テキストはギャグなのだけれど絵がエロい。ヒスイと千佳ねえのおっぱいは凶器レベル。でもパンツは絶対に見えない。■GAME主人公の描く漫画の表紙デザインを自由に決められると言うシステムがあるけれど、これが結構楽しく、しかも決めた表紙が作品の至るところで使われるので面白い。あと漫画のタイトルと主人公のペンネームも自由に変えられる。それと用語解説辞典「ボキャ典」。箒星氏の悪ふざ……遊び心がいっぱいで読んでいて面白い。特にあかざ「このシナリオ○○(つまらない、没等)ですね」箒星「あかざさんは読解力がないですねww」このシリーズ好きすぎるwコンフィグはそこそこ。一通りは揃っているし、既読文章を自動でスキップする機能は楽で良い。ただオートモード中に、十字キーや○ボタンを押して自分で文章送りしようとすると、オートモードが解除されてしまうのは痛い……あとオールクリア後のキャストメッセージは良かった。是非他のメーカーもしてください。■音楽●BGM曲数は普通の曲が14曲にボーカル曲のメロディバージョンが2曲の16曲。少ない……。曲自体は良いけれど、オープニングのインストバージョンがちょっと最強すぎるかも。●ボーカル曲・OP「全世界待望!純愛ロマンス」 / 井上みゆ・ED「君に花束を 空に恋話」 / 井上みゆ・キャラクターソング「ポジティブルール」 / 高杉ハルカ(CV:青葉りんご)オープニングとキャラクターソングはアップテンポでエンディングはしっとり系。オープニングは世界観にバッチリだし、歌詞の中に地味に本編中の主人公の台詞が入っていて、おっ、と思った。エンディング曲はちょっとしんみりしすぎな気も。ハルカちゃんのキャラクターソングが一番好きだ。ちなみに合いの手の入ったオタ芸バージョンも有。■声優柚原有里 中田順子 櫻井浩美鳴海エリカ 青葉りんご宮沢ゆあな 伊東隼人 山本兼平凛菜の声は名義が全部違うけれど、魔妹とか月のメイドとかと同じ人……うん、いい声している。あとは櫻井氏の千佳ねえは滅茶苦茶良かった。今回一番声とキャラクターがマッチしているかと。ちなみにりんごりんと山本氏は一人二役担当。ハルカちゃんと編集長はすぐに分かるけれど、岩原監督と副編集長は分からないわ……声優さんマジパネェっす■CG絵師はあかざ氏。ライトで肉感的で少し癖のある絵柄。立ち絵は勿論難しそうな構図のCGも崩れがなく綺麗。と言うか全部のイラストがテキストとマッチしている。テキストとイラストが噛み合っていないなんて言うのはよくあることだけれど、ここまでマッチしているのも珍しい。シナリオの人が絵も描いたの? と思う程にピッタリ。SD画もおもしろかわいくって最高。枚数は全部で99枚(内14枚がSD画)で、質・量共に満足。立ち絵は兎に角演出が細かい。差分自体はそこまで多い訳ではない……寧ろ今時服装2パターンは少ないとさえ思うけれど、演出が凄いからか多く見える。ライブハウスの背景で客が動いていたり、CGがグルグル回ったりとかなーり頑張っている。■難度ヒロイン選択式なのでストーカーで余裕。選択画面の枠外コメントが地味に面白い。攻略縛りはないけれど凛菜編はグランドルートと言ってもいい内容なので是非最後に。■総評今までプレイした作品の中で一番面白かった。ギャグがメインだけれどギャグだけじゃない、熱血青春ドタバタストーリー。「この作品に出会えてよかった」なんて本気で思うのは本当いつ以来だろう。好き嫌いが別れるノリだろうとは思うけれど、是非、是非! やってほしい。★ネタバレ(↓に白文字で書かれています)基本「こまけぇこたぁいいんだよ」スタンスだけども言わせてくれ……なんで自分の父親を本気で忘れてるんだよ主人公!?